日本からの唐辛子の伝来

キムチに使われる唐辛子は、元々朝鮮半島に自生していたものではない。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日本が朝鮮半島に持ち込んだものとする諸説、江戸時代の貿易活性化によるものだとする諸説があるが、元々アジアには存在しなかった唐辛子が国交があったポルトガルとの貿易により日本に渡り、漬物の添加物として使用された事に始まり、腐りにくく味覚に合っていた事もあり、やがて朝鮮半島にも渡り、広く親しまれる事になった。日本からの伝来に関しては江戸時代に朝鮮通信使が持ち帰ったという説もある。また、唐辛子を使用することになったこの頃にキムチという名称が定着した。
製造法
韓国のキムチ
一般的な白菜キムチは以下のように漬ける。
白菜を1日ほど塩に漬ける。
水で洗って塩抜きし、葉に薬念をまぶして壺に本漬けする。
薬念としては、唐辛子、ニンニク、ニラ、塩漬けされたアキアミ(日本ではアミエビの名が一般的)、イカ、イシモチ、イワシなどの塩辛、魚醤の他、牛肉や煮干し、昆布などの出汁を合わせたものが用いられる。リンゴ、梨、栗、ナツメなど果物を加えて味をまろやかにしたり、生のカキやイカを加えコクやうまみを補ったりすることもある。
本漬けで4、5日ほど発酵させると出来上がりである。乳酸発酵を伴うため、ガスが発生する。そのため、完全な密閉容器にキムチを詰めて室温で保管していると、数日で破裂する恐れがある。
北朝鮮のキムチ
朝鮮民主主義人民共和国のキムチは、韓国とほぼ同様であるが、酸味が抑えられ、比較的に甘みがある。
日本とキムチ
昭和後期に入る頃までは、その辛さやニンニクの臭みが日本人の味覚に合わなかったことから、存在は知られていてもあまりなじみのないものであり、キムチという名称も一般的ではなく「朝鮮漬」と呼ばれることが多かった。
しかし1975年に桃屋から発売された「桃屋 キムチの素」が人気を呼び、また1980年代後半に激辛ブームが起こると消費量が増加、ブームが沈静化した後も一定の販売数を保ち、一般のスーパーマーケットやコンビニエンスストア等で手に入るようになった。一般のスーパーでは日本国産のキムチが売られていたが、1990年代から急速に消費量が増え、韓国から輸入されたキムチも流通しはじめた。社団法人・食品需給研究センターによると、キムチは2004年に日本国内で浅漬けに次いで2番目に多く消費された漬物とされている。
だが、日本の韓国からのキムチ輸入量は2005年をピークに減少を始め、現在では日本国内で流通するキムチの主流は日本産になっている。これには韓国産のキムチから寄生虫が発見された事件が大きく起因しており、2005年から2006年の間に日本のキムチ輸入量は46.4%減少している。東京都では人に寄生する有鉤嚢虫(脳や眼に寄生した場合は重篤な症状を示す寄生虫)の感染源として輸入キムチを原因のひとつとして上げている。
日本では浅漬けの製法(白菜の塩漬けに調味料を加える方法)でもキムチが作られており、浅漬けキムチ、和風キムチなどと呼ばれ、韓国式のキムチとは区別される。
韓国式のキムチと和風キムチの違いは、主に乳酸発酵の有無にある。韓国本来の製法では魚介の塩辛が発酵し、濃厚なうまみとともに、酸味が生まれる。この発酵臭とニンニクや魚介の香りが混ざった強い臭気が伴うので日本では好みが分かれる。 一方、多くの日本のスーパー等で販売されている国産のキムチは、浅漬けに調味液によるキムチ風辛み味付けをした物で、味覚的にはあっさりした物が多い。2000年代現在では「キムチの素」などの名称の調味料が販売されており、一般家庭でも容易に浅漬けキムチを作ることが可能である。韓国のキムチと比べると酸味が抑えられ甘みが強い。 また、日本製のキムチは、化学調味料(グルタミン酸ソーダ等)で味を補うものがほとんどであり、本来使うべき魚介類(アミやイワシ等)の塩辛類を全く使わないものが多い。キムチの乳酸菌は、魚介塩辛に由来するものがほとんどなので、発酵による酸味では無く、人工的に酸味料などで酸味を演出するような国産キムチも多いが、乳酸菌の効果はあまり期待できない。 その一方で、一部のメーカーではこういった添加物を使わない無添加のキムチを製造し、インターネット通販や生協の共同購入などで販売している例もある。 また、全国各地に点在する、在日韓国人による小規模なキムチ店では、店主が作ったキムチを小売りしている。もともとは同胞向けに販売していたのだが、最近は日本人も購入するようになった。こうした小規模製法の場合は、製法は韓国式だが、多少の添加物(アミノ酸)を入れている例は多い。
この様に、両国で味に差異の生じる製法が根付いた背景として、双方の食習慣の違いも大きな影響を与えている。酸味が抑え目のキムチが日本人に好まれる理由として、沢庵漬けなど野菜の漬物を直接、白飯のおかず として食す食習慣が根付き、ヴィトンモノグラム 酸味が強すぎるままではその役目を担い辛く、そうした食べ方をする日本人の口に合わせていく事で今日の日本風キムチがある。一方、韓国の場合、ナムルなど白飯の直接のおかずとする(一見、日本の野菜漬物に近い触感・役割の)野菜の和え物も存在はしているが、キムチの役割は(日本でいう醤油やカツオブシといった)調味料の様なもので、風味やダシの強さを求められる結果、より発酵した酸味の強いものが好まれてきた。主な用途がはっきり異なる為に今日まで味の相違が存在し続けてきた訳であり、今後、両国の食文化交流を通じて各々で馴染みの薄かった方のキムチも食卓に浸透していく可能性も考えられる。
地方によっては、唐辛子を多めに使った漬物や、にんにくをやや多めに使った白菜漬、塩漬けした大根を干したものなどを「朝鮮漬」と称する例もある。

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