キムチ

キムチ(김치)は、白菜などの野菜と、塩・唐辛子、魚介塩辛、ニンニクなどを主に使用した漬物。朝鮮半島で生まれ、現在は世界各地で食されるようになった。かつては朝鮮漬けという呼称が一般的であったが、現在は一部地域を除いてキムチという名前が定着している。 単独で、あるいはつけ合せ(特に焼肉店)として食べられるほか、豚肉と一緒に炒めた「豚キムチ」などの材料や、チゲの具(キムチチゲ)としても用いられる。
概要
キムチは越冬用の保存食であり、現在の中国東北部で作られていた酸菜が伝わり現在の形へ変化していった。初めの方のキムチは青唐辛子を使用した「白キムチ」・もしくは唐辛子ではなくニンニクや山椒を使用した漬物であったが、日本から赤唐辛子が伝わってからは赤い色の「赤キムチ」が主となった。
唐辛子の強い刺激、野菜の甘味、乳酸発酵による酸味・うま味と塩辛さが混じり合った風味が特徴である。例外はあるが、多くの場合は魚介類(もしくは魚醤や塩辛や塩あみなどの漬物)やニンニクなどを使用するため、刺激や匂いに特徴がある。
朝鮮半島だけではなく、朝鮮民族が多く暮らす国・地域では、市場などでキムチを売っている事が多い。ソビエト連邦時代に沿海州から朝鮮系住民(高麗人)が移住したウズベキスタンでは、市場やレストランでもキムチ(シムシャとも呼ばれる)が見られる。
言葉
朝鮮語で「野菜を漬けたもの」の意である沈菜(침채、チムチェ)が語源とする説や、沈漬(チムチ)、鹹菜(ハムチェ)を語源とする説など各種あり、定かではない。
英語表記
キムチの英語表記について、Kimuchi(日本語の読み)と表記したものと kimchiと表記したものが同時に使われていたが、東京で開かれた国際食品規格委員会(CODEX)で日本が浅漬けを含むkimuchiをキムチの標準としようとしたことに対し、韓国はKimchi(朝鮮語音からマッキューン=ライシャワー式にて転写)であると主張し、1996年3月に国際食品規格委員会(CODEX)のアジア部会にて当記述が認められた。一方、文化観光部2000年式ではGimchiであり、英語圏においては例えばアメリカの韓国料理店では、kim chee又はkimcheeとメニューに書かれていることが多く、他にもKorean pickles、Fermented vegetable foodsという表記もされる。
文化財
中華人民共和国の国務院は、アリラン、伽椰琴、回婚礼、シルムを第3次国家無形文化遺産に登録したことを2011年6月21日に発表した。これは、韓国の大きな反発を招いた。これに対抗する形で、2011年7月1日、『韓国のキムチとキムジャン文化』を2012年のユネスコの無形文化遺産への登録を目指し申請すると、韓国の文化財庁が発表した。
歴史
韓国では一般に、キムチの文献初出を13世紀初頭としている。唐の玄宗を題材とした長編詩で有名な李奎報(1168年 - 1241年)の詩集『東國李相國集』に収録されている「家圃六詠」という詩に「菁(かぶら)」という部分があるが、その中の「得醬尤宜三夏食 漬鹽堪備九冬支(醤漬けして夏に食べるのがよく、また塩漬けして冬支度に備える)」という意味である。なおこの記述の中に「キムチ」という名称は登場しない。また該当の食べ物は日本や中国の漬物と特に変わりがなく、唐辛子や塩辛、白菜を使用するといったキムチの大きな特徴はまだ見受けられない。また蕪とは大根と同じ根菜であり蕪の発酵を伴う漬物としては既に日本や中国には昔からあったが朝鮮半島には無かった。塩もキムチの乳酸発酵で用いられる塩辛などでは無い。
16世紀、朝鮮半島に日本から唐辛子が伝来してしばらくしてから、唐辛子を用いて作られるようになった。
持ち込まれた当初、朝鮮では唐辛子のことを倭芥子、若しくは倭椒と呼び、毒があるとして忌避していたが、後にキムチをはじめとした料理に用いるようになった。1670年のハングル料理書『飲食知味方』に出てくるキムチは、唐辛子を使用したものは一つも見られない。
1715年の『山林経済』にはじめて唐辛子がみえる。19世紀の文献『閨閤叢書』(1809)に出てくるキムチを見ると、粉の唐辛子ではなく千切りの唐辛子が少し入れる製造方法が記録が残っており(日本で「朝鮮漬け」として知られている漬物に似たもの)、ヴィトンモノグラム 19世紀前後に唐辛子が使用され始めたことが推測される。1827年の『林園十六志』に、はじめて現在の加工法に近い「薀菜」がみえる。
現在食べられている白菜は、中国人が品種改良によって生み出した野菜であり、今の結球型の白菜が完成したのは18世紀以降とされる。よって塩辛、唐辛子と白菜を使ったキムチの登場は、どんなに早くても18世紀以降[5]と考えられるだろう。

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