瓶のデザイン

ラリックやバカラの登場により、香水瓶のデザインは華美で精緻、凝ったものが一般化していたが、シャネルの思い描くデザインは、その流れに逆らうものだった。
彼女は「非常に透明な、見えない瓶」でなければならないと考えていた。通常この香水瓶の、角を落とした長方形のデザインは、シャルベの洗面用化粧品の瓶に影響されたと考えられている。シャネルの恋人だったアーサー・カペルが愛用した革製の旅行鞄に、このシャルベの瓶が装備されていたという。
また、カペルの持っていたウイスキーデキャンタを気に入って、その「高価な、極上の、風情のあるグラス」を再現したのだという説もある。
1919年当時のシャネルNo.5の香水瓶は、現在のものとは違うデザインだった。最初の容器は、小さくてほっそりした、丸い肩を持つもので、顧客を選ぶためシャネルのブティックでのみ販売された。
1924年に「パルファム・シャネル」が設立された際、ガラスの強度が運搬や配達には不足していることがわかった。そのため角を落とした四角いデザインの瓶に変更されたが、大きなデザインの変更はこれが唯一である。
1924年に刊行された「パルファム・シャネル」の販売パンフレットでは、香水容器について次のように説明している。
「製品が完璧だからこそ、ガラス工の技術に慣習的に頼ることを潔しとしない。並ぶもののない品質、ユニークな構成、クリエイターの芸術的個性を表現した、香水の貴重な一滴によってのみ装飾されたシンプルな瓶は、マドモアゼルのお気に入りとなるだろう。」
1924年以来、瓶のデザインは同じものが引き継がれているが、栓のデザインは何度も変更がなされている。オリジナルの栓は、小さなガラスのものだった。シャネルブランドを象徴する八角形の栓は、1924年に瓶の形状が変更された時から使用されている。1950年代には、より厚く大きなシルエットの栓になり、斜角のカットが施された。1970年代に栓はさらに目立つものとなったが、シャネル 二つ折り長財布 1986年にバランスを訂正し、栓のサイズは瓶の大きさに釣り合うようになった。
バッグに入れて持ち運べるサイズの小瓶は、1934年に導入された。統一小売価格と容器サイズは、より幅広い顧客にアプローチするために開発された。これにより、大瓶の価格では高価すぎると感じていた顧客を取り込み、販売促進することに成功した。
香水瓶は、数十年を経てそれ自体が文化的意味合いを持つ人工産物となり、1980年代半ばにアンディ・ウォーホルは「広告:シャネル」と題したシルク・スクリーンのポップ・アート作品で、香水瓶を偶像として取り扱っている。
2014年クルーズコレクションではこのボトルと同型の筐体を持つバッグが展開された。

シャネル 二つ折り長財布